コーヒーでも飲みながら、ゆっくり付き合ってほしい。☕
トレードを長くやっていると、誰もが一度は「完璧なインジケーター」を探し求める旅に出る。RSIだのMACDだの、ありとあらゆるツールを組み合わせても、結局は「後出しジャンケン」のような感覚に陥ることが多い。僕もそうだった。
でも、最近のEA開発、特にAIを組み込んだアプローチは、その視点を根本から変えてくれる。今日は、僕が面白いと感じた「Mantis」という戦略の考え方について、少し贅沢に語ってみようと思う。
「価格」ではなく「速度」を見るということ
普通、僕たちはチャートの「価格」を見る。150円から151円に上がった、といった具合に。でも、プロの視点や高度なシステムが注目するのは、そこから一歩踏み込んだ「変化の速度(1階差分)」だ。
例えば、車を運転しているところを想像してほしい。今の速度が時速60kmであることよりも、「急加速した瞬間」にこそ、何かが起きていると感じるはずだ。相場も同じで、価格そのものよりも「どれくらいの勢いで動いたか」という速度の情報にこそ、トレンドの正体が隠れている。
この戦略の面白いところは、「生の値(OHLC)」と「変化の速度」をあえて分けてAIに教え込んでいる点だ。情報を整理して入力することで、AIが相場の「脈動」を捉えやすくしているわけだね。📊
AIの「注目力」をトレードに転用する
ここで登場するのが「Self-Attention(自己注意機構)」という技術だ。名前は難しそうだが、要は「過去のデータのどこに注目すべきか」をAIが自分で判断する仕組みのこと。
例えば、過去60本分のローソク足があったとして、AIが「あぁ、30本前のあの急落が今の動きに強く影響しているな」と判断して、そこを重点的に分析する。人間が経験的に「ここが意識されるラインだ」と感じる感覚を、数学的に再現しようとしているんだ。
「確信」と「加速」が重なる瞬間にのみ仕掛ける
AIが「これは強気なimpulse(衝動)だ!」と判定したとしても、すぐに飛びつくのは三流だ。大人のトレードには、もう一段階のフィルターが欲しい。
この戦略では、AIの推論確率が75%を超え、かつ**「価格の上昇速度が、直近の平均的な変動(標準偏差)の2倍を超えた瞬間」**にだけエントリーする。
つまり、「AIの確信」という直感的な判断に、「統計的な加速」という客観的な証拠を掛け合わせている。この二重チェックがあるからこそ、ダマシを減らし、本物のトレンドの波に乗ることができる。
負けないための「大人の作法」
どんなに優れたAIでも、100%の正解はない。だからこそ、決済とリスク管理にこそ知性を注ぐ。
- 決済の美学: AIが「もう強気じゃないな」と感じた瞬間(確率50%未満)、あるいは「レンジ相場に入ったな」と判断した瞬間に、未練なく手仕舞う。
- リスクの限定: 1回のトレードで失うのは資金の1%まで。
欲をかかず、不確実な局面では「何もしない」ことを選択する。これが、システムトレーダーとして生き残るための唯一の正解だと僕は思う。💡
開発の舞台裏:PythonからMQL5へ
「こんなのどうやって作るんだ?」と思うかもしれない。今の時代、開発の流れはとてもスマートだ。
まず、研究室のような環境である Python (PyTorchやTensorFlow) でAIモデルをじっくり学習させる。そして、完成したモデルを ONNX という共通フォーマットに書き出す。それをMT5の MQL5 で読み込めば、AIの知能をそのまま自動売買システムに組み込める。
Pythonで「考える」部分を作り、MQL5で「執行する」部分を作る。この役割分担が、現代のEA開発のスタンダードになりつつある。
おわりに
正直に言って、最初は難しく感じるかもしれない。ニューラルネットワークだのONNXだの、言葉だけ聞くと頭が痛くなる。
でも、一つずつ紐解いていけば、それはパズルのような快感がある。自分の立てた仮説をコードに落とし込み、AIがそれを検証し、実際の相場で形になる。このプロセスこそが、大人の趣味としてのEA開発の醍醐味だと思う。
完璧を求めるのではなく、知的な好奇心に従って少しずつ構築していく。そんな風に、あなたも自分だけの「相場の視点」をシステムに込めてみてはどうだろうか。
さて、そろそろコーヒーを飲み干して、僕もコードを書きに戻るとしよう。☕\n